子どもを信じる

過去に、「最下位になってもいいから試合に出ましょう。」と言って実際に試合に出した選手が二人います。

経験を積ませるために。それは長年の指導で「この子は試合に出る方が伸びるだろうな。」と分かっていて、闇雲に出すというのではありませんでした。試合に出ることは何カ月も練習するより得られるものが大きいことを知っているから。

 

予想通りといってはなんですが、結果は惨敗でした。

1人のお母さんが言いました。

「この子は才能がありません。だって順位も最下位でしたし。」

私はこの言葉に衝撃を受けました。

えっ?お子さんめっちゃ頑張ったよ。レベルの高い選手の中、果敢に攻めたよ。最下位は恥ですか?。才能ありませんか?。せめてよく頑張ったねって言ってあげて。悲しそうな顔を子どもに見せないで。

結局、その生徒さんは新体操をやめました。せっかく新体操を上達させるチャンスだったのに、1回の試合の結果でお母さんが傷つき、がっかりしたお母さんに子どもが傷つきました。

 

もう1人のお母さんはこうでした。

「これからもご指導宜しくお願いします。」

この一言だけ。本当は辛いでしょうが、決して取り乱したり子どもを責めたりしませんでした。

いつもニコニコ、子どもを見守っています。おかげでその生徒さんは今でも新体操を続けて活躍しています。

 

結局は、親の言葉がけ次第だと思います。…ですが、お母さんの気持ちになってみると、毎日の練習の送り迎えに加えて、食事に気を遣ったり費用もかかったり…、一生懸命子どもに尽くしているのに順位が伴わなければ愚痴を言いたくなるのはわかります。しかし、あなたは才能ないからと言われた子どもが成長しますか?。どんなに良い環境を与えても、どんなに尽くしても、この一言でフィニッシュです。子どもは頑張れません。次第に指導者の言うことも聞かなくなります。

試合で命を取られるわけではありません。みんなまだまだ小さくて、新体操はこれからなんです。長い競技生活のうちの過程にすぎません。

 

ここで1つ…。

オリンピック2大会連続個人総合金メダリストの、体操の内村航平選手は、6歳で出た最初の試合は最下位だったそうです。内村選手のお母さんは体操のコーチなので、体操をやめさせるという選択は絶対にしないと思いますが、万が一、やめさせていたらオリンピック金メダルも幻になっていたかもしれません。

どんなに小さな試合でも1位と最下位があります。どうかお子さんを長い目で見てやってください。

2018年01月26日